たなべの杜・設計士インタビュー『杜に還る住まい・町並みに緑を増やし緑と共に暮らす』

2021年03月19日

PIECE広報の三島です!サイト内の家づくり相談役をつとめる住宅プランナーの坂本さんと一緒に住宅メーカーさんの魅力を探る突撃レポート企画。

今回は、「株式会社たなべの杜」(松江市)の設計士・永野さんが昨年8月に建てられた自邸にお邪魔してきました。

外観

©Yano Toshiyuki

宍道湖の湖畔に佇むハイセンスな空気感を纏う建物。目にした瞬間、上品で繊細なデザイン性、センスの良さを確信しました。「早く中を見たい!」と高鳴る鼓動は坂本さんも同じだったはず(笑)

出迎えてくださった永野さんご夫妻に自邸のご紹介はもちろん、設計士としてのこだわりや「たなべの杜」が目指す家づくりについてお話を伺いました。


 

宍道湖のロケーションを活かし綿密に組み立てられた構想とは?

ー1年ぐらい土地を探すも、なかなか要望に合う土地が見つからなかったというご夫妻。

奥様は宍道湖が見える場所が良いなと漠然と思い描いていたそう。偶然にもタイミングが重なり、この地に巡り合ったという。

坂本さん

宍道湖のロケーションがとてもいいですね、こんな土地はなかなか無いですよ。

永野さん

水の近くに家を建てたいと思いながら、休みの日は妻とドライブに出かけ土地を探していました。

そんな時、たまたま訪れたこの場所が売り土地とわかり購入しました。

そこから間取りに約1ヶ月、この立地を活かしたストーリーや詳細の設計に半年近くをかけ「湖畔の家」が完成しました。

 

 

 


―永野さんが設計し「湖畔の家」と題された自邸。

インナーガレージのある1階は土間スペースを挟み、左に和室、土間を右に進むとシューズクローク、階段から2階に上がると家族4人が住む居住スペースとなっています。

店舗土間1

©Yano Toshiyuki

階段スペースとの仕切り壁には出窓を意識した開口部。カウンターはエッジの効いた切り口で、正面からとてもシャープに見えるよう加工が施されていました。

階段

永野さん

この家はただの家にしたくないと思い、色々と構想を考え1階は、店舗利用を前提として設計しました。

春には土間スペースで妻が、アクセサリーや器をメインにしたライフスタイルショップをオープン予定です。

東側の壁は外壁材を取り込み、西側の壁は左官風の塗装、床はタイル仕上げにしています。外部で扱われる粗い素材を内部で繊細に使い、路地裏のような屋外空間として設計しました。

 

永野さん

カウンターもですが、どのように見えるかデザインは細部までこだわっています。

土間の窓はちょうど椅子に座ると、宍道湖のテトラポットが隠れて土手と水面だけが見える高さに設計しました。

 


―土間と隣接する和室を案内してもらいました。飾らないシンプルさ、しっぽりと心が落ち着く和室です。

和室

©Yano Toshiyuki

天井はサツマ葦ベニヤというすだれ状のボード。京都の会社の職人が一本一本、手作業で糸を通して編み繋げたもの。

永野さん

今は友人や両親が来た時のゲストルームとして使っていますが、いずれ民泊利用も考えています。

そのために家電を置くスペースと、シャワー室・トイレ洗面など水回りも予め完備しました。

他にも、翻訳家の妻が英語教室を開くことも考え、照明は部屋の利用シーンに合わせて調光できるようにしました。

土間と和室を一体に使いギャラリーとして貸出すなど、多用途に使える和室として考えました。

和室

©Yano Toshiyuki

―さらに老後の生活も考え将来的には、夫婦の居住スペースを1階に移すことを想定し、和室を寝室、土間をLDKとしてキッチンやエコキュートの接続がすぐにできるよう先行配管までされているそう。

永野さん

階段を上がる生活が大変になれば1階に移り、2階は賃貸利用し、その収入でローン返済もできると考えています。

 

ロケーションが良い場所なので、将来的には都会の方向けに別荘売却も想定しています。

坂本さん

世代に応じて可変性のある家なんですね。

今の状況に合わせて造りすぎない家が本当は理想ですよね。

別荘売却に関しては、リモート生活もできますし、セカンドライフを田舎で過ごされるのもいいと思いますね。

 

地元の方が普通に考えたら、立地的にあまり興味を持たれない場所ですが、都会の方にはこの景色があるから価値をプラスアルファできる場所ですね。

―「今まで何回か家のことを聞きましたが、ここまで考えてくれているとは知りませんでした。老後まで安心です!」と話す奥様。

本当に私たちもこの構想には驚きました。

 


こだわりを妥協しない、緻密な設計が美しさとゆとりを生み出す

 

―気になる2階の居住スペースを案内してもらいました。

「ワンフロアに家族4人。あまり背伸びせず、ちょうどいい30坪の平屋をイメージした間取り」と話す永野さん。

階段を上がり、真っ先に目に飛び込んできたのは大開放された壁一面の開口部。

リビングからバルコニーへ、内と外の境界線を感じさせない自然な繋がりが演出されていた。

そしてバルコニーから宍道湖を一望できる圧巻の景色、一気にテンションが上がりました。

LDK

©Yano Toshiyuki

坂本さん

この景色はすごいですね~。

奥様

本当に最高なんです!

早朝は朝靄の中しじみ漁を眺めて、昼は晴れていると湖面が光ってキレイで、すごく気持ちいいんですよ。

永野さん

気候が暖かい日は、窓を開けたまま過ごします。

バルコニーにハンモックを掛けて寛いだり、風でレースカーテンがふわふわ揺れた感じも気持ち良いですよ。

ダイニングに座ってバルコニー越しの景色を眺める時、宍道湖の水面だけが綺麗に見えるように、建具の中桟と笠木の高さが重なるように計算しました。

 

宍道湖の花火も見えますよ。バルコニーの笠木はフラットにしているので、飲み物を置くこともできますし、雨で水がたまると、光が反射し水面の動きが天井に映り込むのも美しいですね。

たなべの杜として、木を多く取り入れ大事に使っています。建具は木製で、すだれを中に入れた造作建具です。

 

床は、東京のティンバークルーさんのフローリングにしました。SMLと3種類の幅サイズをアレンジ、ぼくが描いた割付図を見ながらパズルのように大工さんが貼ってくれました。

 

LDK

©Yano Toshiyuki

LDK

©Yano Toshiyuki

バルコニー両袖は物置スペースとなっていて、室外機や洗濯物道具などが収納されている。掃除用の水栓もあり、デッキ材はアコヤという素材を採用。薬剤処理してあり50年メーカーで保証されている。

 

坂本さん

よくみると、全体的な造作部分や床仕上げ、壁や枠の納まりなど細かくデザイン性にこだわっておられるから、ほんと施工が大変な家だな~。大工さん泣かせの納まりですね。

永野さん

そうですね、仕上げの施工も特殊だから順番通りにしないと納まらないです。

仕上げもですが、1階と同じく2階の窓の位置や形にもこだわりました

基本的に横に細長い長方形と正方形のみの2種類を使い、風景を切り取るイメージで座った時にどういう景色が見たいかを考え、建てる前の敷地に行き脚立にあがって想像し窓の高さを決めました。

同時に、外から中の間取りが想像できないことも防犯面として意識しました。

 

西日と西風が厳しい環境なので、建物を振って、西側には基本的に窓をつくらないよう対策をしました。

洗面の照明は鏡の上に電球色の間接照明をつけ、脱衣室にはホワイト系の照明をつけることで光が混ざり肌の色が綺麗に見えるような工夫もしています。

造作の洗面化粧台やウォークインクローゼットなど、収納は家族の人数や持ち物に合わせて、予め何をしまうか考え寸法を決めて設計しています。

 

一方で子どもがまだ小さいので、成長に合わせ棚は可動式に、子ども部屋は建具をつけず必要になった時に自分で考えられるように余白も残しています。

店舗土間2

©Yano Toshiyuki

寝室の壁や玄関の一部は夫婦で塗った。店舗利用で多く使われているポーターズペイントは、塗装の種類が豊富。

坂本さん

こういう家づくりはとても良いですね。

永野さん

そうですね、細部にこだわった家づくりは建築会社が大変かもしれませんが、家づくりは住まい手のためにつくることが大事ですよね。


これでいいではなく、これがいいと言えるまで理由を突き詰める

―松江市出身の永野さんは4年前に東京から島根に帰郷、たなべの杜に入社し1年半になる。

ここまで緻密に考え尽くされた設計する永野さんの思考は、どのように形成されたのか。

奥様から見ても「ちょっと普通とは違う」感覚の持ち主、永野さんとはどういう人なのか。

キッチン

左から奥様、永野さん、坂本さん。

永野さん

基本的には面白いことがやりたいです。

もともとは、広島にある「SUPPOSE DESIGN OFFICE」という谷尻誠さんの事務所に3年間いました。

これまで手掛けたカフェ店舗の設計では、駐車場のアスファルトをそのまま店内に引き込み白線で交差点を描き道路に見立て、外と中が同じ床で繋がっているカフェ空間にしました。

普通の形式に捉われると良い案が思いつかないので、常識を疑うところから考えていましたね。

 

谷尻さんに言われた「“これでいい”ではなく、“これがいい”に変えろ」という言葉が印象的で、なぜそうでなくてはいけないのか、なぜその高さなのか、自分の中でこれがいいと思えるまで考え検討し理由を突き詰めるという能力は広島の修業時代に培いました。

だから、デザインはもちろん、生活も“これがいい”というところまで考えてやろうと思っています。

住宅設計は“誰かのために建てる”という意図が明確にわかるので、テンションがあがりますね。

その方に寄り添った建物ができることにやりがいを感じます。

―そんな永野さんが考える暮らしや子育てについてはいかがでしょう?

永野さん

休日は家族で過ごすことが趣味みたいなもので、みんなで夜のドライブに出かけることも日課になっています。

料理やお菓子も作りますね。

自分は保育園の時から母に料理や家事全般を教わっていたので、我が子たちにもそういう生きる力を養ってほしいという想いがありますね。

 

家づくりを通して、暮らし方や子育てについて考えた時に“便利になりすぎると大事なものを忘れてしまう”と思っていて。最近は特に家事動線をラクにとか、建築素材や家電も進化して便利なものが増えたり。

 

我が家で使っている仕上げや素材は、特性があったり、こまめにメンテナンスが必要だったりしますが、そういった手入れをする親の姿を日々子どもたちに見せることで、乱暴に扱うと物が壊れるから大切に扱うとか、思いやりを持ってくれるよう意識しています。

―のびのびと子どもが遊べる場所が減ってきている中、せめて家の中では自由にさせたいと考える永野さん。

キッチン横の壁には、大きな紙に描かれた絵が飾ってありました。大晦日の晩、ごはんの後にいきなり永野さんと子ども達が絵を裸になって描き始めたという奥様の話を聞き、賑やかな時間を過ごす親子の光景が浮かびました。

 

奥様

主人は本当に自由で、マイペース。本能のままに心の声を聴いて生きているという感じですね。家族のことや家のことをこんなに考えてくれてたり、普通の想像を超えてくるところも大好きですね。


ストーリーを伝えることで、作家と買い手を繋ぎたい

店舗

©Yano Toshiyuki

―ご主人への愛が溢れているチャーミングな奥様がオーナーとして春にオープン予定のライフスタイルショップ「Re;ception」はどんな構想があるのか伺いました。

奥様

主人も私も前から雑貨が好きでした。

ただ、単純に売り手と買い手が物を購入しお金が移動しているだけの雑貨屋に魅力は感じなくて、その間に私たちが立つことで作家と買い手を繋げることができないかと模索中です。

 

取り扱うのは器やアクセサリーがメインで、私たちが時間をかけて実際に使い厳選した物だけと決めています。

 

1年くらい使ってみて、良かったら作家さんの工房にお邪魔し取材をして、お互いに気に入れば取引を始めるというスタイルです。作家さんには購入した方へメッセージカードを書いてもらいます。どんな人の手でどのようにつくられたものなのか、器ならこの料理が合う、レンジが使えるか、割れないか、アクセサリーなら似合うファッションの提案までを含めて実際のストーリーをお客様に伝えたいと思っています。

 

こういうことを面倒くさがらず、お客様を大事にしたいという想いのある作家さんとしかお付き合いはしません。

逆に作家さんにもどんな方が購入したのか伝えたいので、任意でスナップショットを撮り作家さんに送っています。

 

さらに、私たちが間に立ち県内外の作家さんや職人さんを繋げることで交流が生まれ、お互いの良い技術を合わせて、新しいプロダクトをつくり地場から海外へも発信ができればと考えています。

―ストーリーのある売り方、魅力あるコトを動かす「Re;ception」の活動が、県内外や世界に漂う面白い人たちをどう巻き込み繋げていくのか、これからがとても楽しみです。

 


緑と共に暮らす たなべの杜だからできること

―最後は永野さんに、たなべの杜・設計士として今後のビジョンについて伺いました。

永野さん

長年にわたり山林業・製材業に従事してきた、たなべの杜だから描けるストーリーと、強みを活かして、新しい企画住宅の開発に取り組んでいます。

性能が良いのは当たり前、それがすべての心地良さではなく“家+α”の価値を持った家づくりが必要だと考えます。

 

コンセプトは、小さく建てて大きく暮らす“家+庭”という提案です。

数字で示す家の大きさに捉われない家づくりの価値観を拡げていきたいと思っています。

自然物しかなかった昔とは違い、時代の変化とともに住宅周辺に取り入れられる緑の面積は減ってきました。

そんな今、家の性能に加え緑を取り入れることでゆとりある豊かさが得られると、提案をする企業も増え意識が高まっています。

ただ、限られた予算で外構にかけられる費用は多くないのが現状です。

たなべの杜では、家づくりに関わる木材はもちろん内装や建具や家具、庭の植栽に至るまで全てを一貫した設計施工ができます。

私たちが考える“家+庭”というのは、森のような緑ではなく、限られた緑をスポット的に入れるものです。

それは住みながら緑が感じられる庭と窓の関係性を考えたり、狭小地であれば、壁面緑化やプランターの木一本からでも室内に緑を取り込む工夫は可能です。

 

このコンセプトは、我が家の設計にも取り入れています。窓の形状・位置や高さは、外に見える景色の取り入れ方を考え計算しています。

庭の演出や屋根の形状、外と中の繋がりをどのようにつくるかで、建物自体の広さ以上に開放感を味わうことも可能です。

 

一般的に、要望として多い“窓を大きく明るい家、だけどプライバシーが守られた家”というのは、だいたいは1日中カーテンが閉めっぱなしになってしまったり、窓の場所や大きさで外から家の間取りがわかってしまったりという家がほとんどです。

 

私たちがしたいのは、カーテンが無くてもプライバシーが守られる窓の設計も含めた緑を感じられる家のご提案です。 これから“家+庭”の企画住宅が多く建つことで、緑に対する意識が高い人が育ち、町並みに緑がどんどん増えていくことを願っています。

自分が理想とする企画住宅の普及により、たなべの杜=“家+庭”というブランドイメージになっていくことを目指しています。

 

インタビューにご協力いただきまして、ありがとうございました。

見どころや伝えたいことが盛だくさんな素敵なお宅でした。永野さんの家づくりや、たなべの杜に興味を持たれた方は、ぜひHPをチェックしてみてください。

 

資料請求・ご相談・モデルハウス見学は随時可能です。詳しくは、たなべの杜HPからご確認ください。

 


 

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