持田建築|古民家・高性能リノベーション事例紹介& お施主様インタビュー
山の中でマンション暮らし?
「高性能フルリノベーションで、がんばらない古民家ライフを満喫」
PIECE広報の三島です! 今回は、住宅プランナーの坂本さんと「持田建築」(出雲市鹿園寺町)さんの「古民家を高性能リノベーションしたお家」にお邪魔しました。 この日は、代表取締役社長の持田稔樹さんと、インテリアコーディネートを手掛けた長濱利佳さん(R.cocomo)に案内していただきながら、施主であるNさんに「古民家暮らし」に至るまでの経緯や、現在の住み心地についてお話を伺いました。 家族構成:夫婦・子ども1人・愛犬1匹 |
―島根県出雲市、のどかな里山にひっそり佇む築150年の古民家。ご縁あってNさん一家と出会い、持田建築さんの手により高性能フルリノベーションされました。まずはNさん一家が、なぜこの古民家に巡り合ったのか?持田建築さんに決めた理由など、当時の様子を振り返っていただきました!
出会いはGoogleマップ、想定外の古民家ライフ
写真:左から坂本さん、持田さん、Nさん、長濱さん
―以前は関西に住んでいたというNさん一家。住まいを求めるにあたり、奥様の出身地である島根に移り住むことを決め、土地探しからスタートされたそうです。
坂本さん:結構いろいろと回られたと思いますが、最終的になぜ持田建築さんになったんですか?
Nさん:以前から山に住みたいという思いがあって。初めは有名な大手メーカーさんをいくつか回りましたが、自分たちの望む土地情報は出てきませんでした。そこで、地場に詳しい地元の工務店さんに聞こうと考えたんです。
だけど、どんな工務店があるかわからず、運を天に任せてGoogleマップで住みたいエリアにある工務店を探しました。
そこで見つけた中に、たまたま持田建築さんがあったんです(笑)。地場の情報に詳しく、子どもの校区についても親切に教えてくださったことが大きな決め手となりました。
持田さん:お子さんが小学生と聞いて一番に校区の心配をしました。その時に探しておられたエリアだと、小学校が統合されるタイミングだったので距離が遠くなるから、新しい小学校の近くをお勧めしました。
Nさん:この情報を教えてくれたのは持田建築さんだけでした。この方なら信用できると思ってお願いしたところ、希望通りの場所を紹介してくださったんです。
長濱さん:持田さんは工務店として、家づくりだけじゃなく地域行事などにも深く関わっておられるので、地元のいろんな情報をご存じですよね。
坂本さん:さすが、地域に根付いた昔ながらの頼れる工務店さんですね!
持田さん:うちしかないと言ってもらって嬉しかったですが、条件に合う場所を探し出すのは一苦労でした。それでも思いの強さを感じたので、うちのOBさんや地元の色々な方に聞いて回りましたよ。そんな時、ちょうど解体を検討中の家を発見、見事に条件が合致したため紹介することができました。
Nさん:見に行くと、年季の入った古民家が建っていました。てっきり壊して新築するもんだと思っていたら、「直して住める」と言われて驚きましたよ!でも、今までの実績を知り高い技術があることもわかったし、何より持田さんが絶対直せる!っていうから(笑)。
それに、話を聞くうちに自分たちの予算で新築した場合、希望するボリュームは難しいとわかりました。中古住宅をリフォームした方が固定資産税も安いし、予算内で思い通りの家になると提案をしてもらい納得できました。
持田さん:古民家は、見た目の傷みはひどくても造りが丈夫なので直せば全く問題ありません。こちらの家も、きちんと現況調査や耐震診断をして大丈夫だとわかりました。
家主さんにも説明し、「費用をかけて壊すより、新しい家族に住んでもらう方が良い」ということで話が決まりました。
古民家改修は、予算とのバランスを取りながらプロの目線で見極めた提案が大切です。安易にできない場合もありますが、今回は建物の状態や大きさもちょうどが良かったので実現できました。
坂本さん:お互いのメリットが上手く合致したんですね!
物価上昇で建築費や金利も上がる中、これからの住宅取得は、新築に限らず色々な方法を考えていく必要があります。そういった意味でも、この選択は正しかったと思います。
Nさん:でも、まさか自分たちが古民家に暮らすことになるなんて思いもしませんでした(笑)。本当に運よく良い物件に巡り合えたレアな事例ですよね。この出会いから、今も家主さんと仲良くさせて頂いてます。裏山で筍採りを教えてもらったり、草刈も手伝ってもらうなど本当にありがたいです。
限られた予算のなかで、快適さと暮らしやすさを追求
―古民家は木造2階建て、瓦屋根と土壁に田の字型という、典型的な農家づくりのお家です。改修は骨組みを残し、基礎から床・壁をすべて一新。暮らしやすさを第一に考え動線の良さと機能性を重視した間取りに変更されました。
性能面は、改修エリアを1階に絞ることで、限られた予算の中で高気密高断熱住宅を実現!古民家とは思えない、快適な住まいへと生まれ変わったそうです。
Nさん:私たちが家に求めた一番の要望は「暮らしやすさ」でした。もともと、古民家に住みたかったわけではないので、特に古民家ぽい暮らしは意識してなくて。とにかく「予算内で快適に暮らせる家」をお願いしたらこうなったという感じなんです。自分たちは全く知識が無かったので、お2人に色々と提案してもらいながら形にしてもらいました。
持田さん:予算が決まっていたので、最小限の改修で高性能な住環境を叶えるため、2階は切り離し1階で生活スペースが完結するよう設計しました。私が性能や構造設計を担当し、長濱さんが間取りや空間と内装について提案するという形で進みました。打ち合せを重ねる度に色々プランが変わっていったけど、結局最初のプランに戻ったね(笑)。
彼女は、2級建築士でもあるから設計を良く分かっていて安心で、自分にない感覚やアイディアも取り入れられて新鮮だったし、すごく楽しかったよね!
2階はそのまま物置として活用。蒸し暑く、1階とは別世界。 |
当時を振り返る長濱さん。既にあるものを活かしながら空間をコーディネートしたそう。 |
長濱さん:構想は3ヶ月くらいかかりましたね。現況を確認しながら、その都度あーしようか?こーしようか?とアイディアが湧いてきて楽しかったですね。間取りは、3LDKと水回りに収納もゆったりめに確保しました。家事動線や使い勝手を最優先に考えながらも、できる限りコストカットが図れるように工夫しましたね。
ただ、奥様が憧れる空間のイメージがあったので、やり易かったです。アイディアを出しながら、とことん打ち合せし、理想の形に近づけられる様にしました。ある程度制限のある中で、色々と考えるのも楽しく、それがリノベーションの醍醐味ですね。
持田さん:黒い梁や煤竹に建具など、味のある古材をデザインとして取り入れていくのも古民家の面白さですね。結構手間がかかって大変なんだけどね(笑)。
もみじ柄のガラス戸は、そのまま再利用した。開閉時にカラカラとなる音が昭和の懐かしさを感じさせる。 |
黒い梁をそのまま見せることで古民家の良さを活かした落ち着きのある空間となった。 |
Nさん:途中から「あれ?古民家って結構いいんじゃない?」って思うようになって。どうなるんだろう?って想像しながら進んでいく感じが、すごく楽しかったですね。リノベーションだから味わえたと思います。
また、壁を自分たちで塗って仕上げたことも思い出深いですね!やっていくうちに段々と腕が上がってきて(笑)。ちょうど、大寒波の年でとても寒くて過酷な作業でしたが、コストカットにもつながったし、何より達成感があって家に愛着が湧きました。
そして、間取りは以前の面影がないほど変わりました。1階だけでも、家族3人で暮らすにはちょうど良い広さでした。続き間の和室と縁側を一体化することで、キッチン・ダイニング・リビングと小上がりの和室がつながる、広々とした家族団らんスペースができました。また、洗濯物は外に干したくなかったので、室内にランドリースペースを確保しました。天候に左右されず干せて、虫もつかないですし、室内でしっかり乾くので助かっています。
さらに、お風呂に浸かりながら緑豊かなマウンテンビューが楽しめるよう、浴室には大きな窓を取り付けました。お気に入りの癒し空間となっています。
浴室に大胆に設けられた窓からは、間近に山の緑を堪能できる。
坂本さん:リノベーションは時間がかかりますが、その分たくさん考えられる良さがありますよね。
今の新築は工期短縮が重要視され、お施主様に考える暇を与えない家づくりも多いです。こんな風に施工側もお施主様も一緒に楽しめる家づくりはとても良いですね。
Nさん:最初は興味のなかった古民家ですが、住み始めてじわじわと良さがわかりました。家具もアンティークなものを好むようになって、新しいものにはない本物の重厚感やヴィンテージの魅力に気づくことができました。実は、この古民家リノベーションの経験をもとに「出雲暮らし」を紹介するブログを始めたら、色々と相談が来るようなって(笑)。実際に古民家活用のニーズの高さを実感しました。
そして、このことをきっかけに、今では空き家となった古民家活用を考えるコミュニティを立ち上げ活動しています。私たちの活動によって、今以上に古民家の魅力や価値の高さが広まり、地域の里山を守る人が増えることに繋がったら嬉しいですね。
以前は広い土間だったという玄関には畳が敷かれ、ちょっとした来客時はちゃぶ台を出してこちらで対応するそう。
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Nさんが「忍者扉」と呼ぶこちらの戸は、キッチンへと繋がっていて買ってきた荷物をすぐに運べる。 友人宅で見たアイディアを取り入れたが、とても重宝しているそう。 |
わざと壁をくぼませた廊下は、旅館をイメージし遊びのある空間をつくることで趣のある雰囲気に仕上がった。 |
タイル調のクロスが素敵なダイニングキッチンは、アンティークの家具も加わり、和とカントリーが融合してジブリの世界を思わせる。 |
作業台を中心に回遊できるキッチン。家族で料理やお菓子作りがたのしめる。
古い梁には、躊躇なくフックや金具が付けられるそう。インテリア好きという奥様の見せる収納に、センスの良さが伺えます。
家族みんなで、約1週間かけて仕上げた塗り壁。初めてコテに触ったとは思えない味のある仕上がり。
リビングの天井には、記念として家族の手形が残されている。
坂本さん:そして、高性能な家ということで室内がとても気持ちいいですね。
持田さん:とても古民家とは思えないでしょう?
うちは建物全体に吹き付け断熱を施しています。高い断熱性と気密性をとることで、効率よく空気をコントロールできるようになるんです。だから、14帖のエアコン1台でこの涼しさなんですよ。色々と住宅性能を研究していく中で、現在のハイレベルな快適性を標準とした家づくりができるようになりました。
Nさん:家の中は、だいたい22℃~23℃に設定してあって一年中快適です。夏もさらっとしていて、冬は外の寒さを忘れるほど暖かいので薄着で過ごしています。驚いたのは、室内で虫の姿をほぼ見ないこと!一歩出たら虫だらけなんですよ(笑)。気密性が高く隙間がないので、入って来られないんだと思います。
さらに、室内で犬を飼っているのにニオイが全然気にならないのも、高性能なつくりで24時間換気のパワーが発揮されていることを実感します。
本当に何度も言いますが、山の中なのに「古民家暮らし」とは思えないほど快適で。まるで、マンションのワンフロアにいるようで、都会の暮らしと同じ感覚なんですよ(笑)。唯一草刈だけは重労働ですが、自然に囲まれ、山の恵みも戴きながら、自分たちらしく「がんばらない古民家暮らし」を愉しんでいます!
坂本さん:少し前に比べ、高性能住宅は比較的簡単につくられるようになりましたが、それを100年越えの古民家で出来ることに技術力の高さを感じますね。また、昔の家は大きな改修に新築並みの金額がかかりますが、快適を確保しながら価格を抑える、という柔軟な提案も素晴らしいと思いました。
家族が楽しく快適に暮らす、そこに持っていくのが私たちの仕事
Nさん:実はリフォームやリノベーションって、基本的に許可がいらず、手抜きしても誰もわからないんですよね。持田さんの素晴らしいところは、そこをあえて新築と同じ基準でやっているところです。
このリノベーションをきっかけに住宅改修に興味をもち、色々な現場を見学しましたが、ひどいところもいっぱいあるんですよね。古民家が流行っているからって、表面的に直して暮らしにくいままの家を提供するのは人道に反すると思います。
もちろん、「寒くても暑くても、それが古民家暮らしの魅力だ」という人にはいいんですが。
今後は、リノベーションにも規制が入ると思うので、そうなった時にちゃんとした会社しか生き残れないですよね。だから、持田建築さんのように普段から当たり前にきちんとしている会社が、とても貴重だと思うんです。
持田さん:建築士たるものは「財産と生命を守らなければならない」この一言に尽きると思っています。
これって当たり前のことなんだけどね。それをわかっていない人がいることも悲しいけど事実なんですよね。
良い家は、最初から屋根やサッシ、壁のつくり、断熱や空調、耐震性など、すべてをイメージして計算しないとダメだと考えています。私たちは、新築もリノベーションも区別せず、そこを怠るということは絶対にしません。
だから、地震が来ても自分たちが建てた家は絶対残ると思っています。それくらい構造や性能はもちろん、丈夫さにも自信があります。
坂本さん:本当に古民家を良くしようと思うのであれば、これくらいのレベルにしないとダメだと思います。住宅会社を選ぶ時は、その会社がどんな考えを持っているか、満足できる質の高い家を建てられる技術があるか、もっとよく調べないといけない。こういったレベルの高い地元の工務店さんがあることを、皆さんに知ってほしいですね。
持田さん:どれだけ親身に向き合うかは大事なポイントですね。これからも自分たちの理念を貫いて、地域に残る古民家の良さを活かしながら、快適な住まいを提供し続けていきます。今後も地場の工務店として、困った時に頼りにして頂ける存在であり続けたいと思っています。
この日のインタビューはなんと3時間にわたり、古民家リノベーションから今後の地域活性化の未来へと話は発展!
「家づくり」というご縁から「地域づくり」という深い繋がりが生まれたようで、皆様それぞれの熱い想いを感じました。
地域に根ざし、確かな技術と経験豊富な実績をもつ「持田建築」さん。
愛着を持って長く住み続けられ、住まうほどに味が出る家づくりを目指し、「高気密高断熱住宅」をもとに出雲地方の気候に適した省エネ住宅に取り組んで27年!
RenoIzumo(リノイズモ)という名称で、「高性能リノベーション」専門事業を運営。自然の力を利用したパッシブデザインの考えも取り入れ、長年の知識と熟練の技で、高性能な断熱リノベーションを数多く手掛けておられます。
ホームページでは、ここでは語り切れなかった家づくりのこだわりや、施工実例に加え、お施主様の声もたくさんアップされています。
また、Instagramのでは、「RenoIzumo(リノイズモ)」としてリフォームやリノベーション事例を紹介されていますので、ぜひご覧くださいね!
お問い合わせは持田建築さんのHP(リノイズモ)をご覧ください。
島根県出雲市鹿園寺町234-3
FAX:0853-69-1480
休業日:不定休
島根県知事 許可(般-3)第7190号
◇レポータープロフィール◇ みんなの広報|テトキクロス(HP) フリーライター|30代・二児の母(高3・小4) 普段はなかなか聞けないリアルなことを素直に聞きたいままに 「今知りたい実際のとこ」をお伝えできるような取材を心がけています。 |